【レッズレディース】
延ばし延ばしにしてきた2015年シーズンのまとめ。
昨2014年分は「2014年シーズン 浦和レッズレディースまとめ」とか我ながら力入ってるなあ(棒 優勝って怖い。さて、気を取り直してスタイルは変えつつ(サボりつつ)2015年シーズンを振り返る。
(1)退団・加入選手
退 団 | 加 入 |
大滝麻未(En Avant de Guingamp[仏]) 坂本理保(AC長野) 齊藤あかね(AC長野) 泊 志穂(AC長野) 成合 瞳(福岡AN) 堂園彩乃(引退表明→オルカ鴨川) 中村みづき(早稲田大) |
長船加奈(ベガルタ) 平尾知佳(ac福島)=前年度特別指定 白木 星(常盤木) 清家貴子(昇格)=前年度2種登録 |
4/10:遠藤 優[2種登録] 4/22:北川ひかる[特別指定] 5/1:松本真未子[2種登録] 5/18:水谷有希[特別指定] |
上段が開幕前の異動、下段は開幕後である。スタメンという観点では堂園が抜けて代表クラスの長船が加入したのでプラマイゼロに見えたが、故障者が離脱し始めるシーズン中盤以降徐々にチームの底力不足が表面化した。
U-19代表クラスの白木が加入し開幕前のTMでは戦力化の期待を漂わせたが、シーズンに入ると新生活への順応や相手チームによる対策もあるのかほぼ沈黙。白木に限らず近年2種登録やJFAアカデミー出身者以外の高校新卒選手が初年度から戦力としてコンスタントに出場する例は絶無の状態となっているので仕方あるまい。
そして散発的に2種登録と特別指定で4選手を登録。北川に関しては(もう書いても構わないと思われるので書くが)開幕前のTMから「練習生」として参画しており、むしろ出場可能になるまでなぜ1ヶ月もかかったのかの方が疑問。ただ、4選手とも8月に前回突破できなかったアジア予選があるU-19代表クラス(結果的に遠藤のみ不選出)であり、ユニフォームを着せて顔写真を掲載するという通常の広報を行わないでいる「15.05.26 浦和レッズレディース 2015年女子特別指定選手受け入れのお知らせ」クラブの冷淡な態度を考え合わせると、「JFA様のご意向」という邪推はできても、チーム編成上の補強策としての位置づけはできなかった。あげく北川については後述する左SBでの依存度が高いのにもかかわらず大会後9月の4試合を離脱、原籍のac福島でのプレーが優先されており、そのモヤモヤ感は未だに払拭できていない。(北川が、とは全く考えておらず、制度共々運用する大人がという意味)
(2)リーグ他成績
W杯とU-19アジア予選の2回の中断を挟んで2回戦総当たり戦(レギュラーシリーズ)の後、1~6位を上位リーグ、7~10位を下位リーグ(エキサイティングシリーズ)として開催したのは前2014年と変わらなかったが、上位リーグに関しては総当たり1回戦に短縮。
3月25日に書いた「展望:国内女子サッカー2015シーズン(3) 1部順位予想と2部他」での順位予想は次の通り。
優勝争いは日テレの完成度が最も高いというかブレる要素が最も少なく、同じく昨季の戦力を維持していると思われるジェフLと浦和がどこまで食い下がれるかの構図と見ている。4位争いが新潟とI神戸、6位争いが伊賀と湯郷ベルとベガルタ、9位大阪高槻、10位AS埼玉。
結果(ES後)
1 日テレ
2 ベガルタ
3 I神戸
4 新潟L
5 ジェフL
6 浦和
—
7 伊賀FC
8 湯郷ベル
9 大阪高槻
10 AS埼玉
ベガルタを過小評価、新潟も一時は2位にあり少し低く見てしまった。ジェフLと浦和は過大評価というよりは現状維持に留まれば追い抜かれるということに尽きるだろうが両者の間には順位は隣り合わせでも結構差があった。
浦和に関して絞れば、「展望:国内女子サッカー2015シーズン(2) なでしこリーグ1部」で懸念したコンディション不良が開幕戦から露呈。2戦目から長船が骨折で離脱してそのコンディション不良が顕著だったDFラインが液状化。攻撃参加、ボール回し、対人、連携のいずれも不安定で、2014シーズンはレギュラーシリーズ(RS)11失点、エキサイティングシリーズ(ES)10試合8失点の堅守が、2015シーズンにはRS18失点、ES5試合13失点と炎上。何とか(結果として下位リーグ行きの)4チームには無敗で6番目のポジションを守ったが、反面残り上位5チームには15試合で1勝しかできなかった。
皇后杯も3部、2部所属(偶然にも共に翌シーズン昇格するチームだったが)は無失点で退けても、ベガルタからは得点を奪えずPK負けで準々決勝敗退はリーグの順位通りの結果。
機会を得て夏の中断期間に参加した「グルーネウェーゲン国際大会トーナメント」(オランダ)は1日に50分を3試合という変則的な状況下でも勝ち切って優勝した。ヨーロッパのクラブは代表クラスが抜けていたと思われるのでどう位置づけたものか難しいし、期待したリフレッシュ効果はほとんど認められなかった。
(3)課題
1)単調な戦術と試合運び
吉田靖監督はマッチトピックス、 15.09.04 vs 伊賀フットボールクラブくノ一「自分たちの力を信じて戦い、重要な再開初戦で勝利する」 において、
ボールを奪ってから少ない手数でシュートまで持っていく速い攻めを狙いつつ、相手の人数が揃った状況では中盤でボールをつないで攻撃を組み立て、中央とサイドの両方を使って相手を攻略することを意識づけ
と述べて、レッズレディースの攻撃における狙いの一端を明かしている。誰もアクセス可能なネット上での発言であることは差し引いても、「ボールをつないで攻撃を組み立て」る点に関しては一年を通して向上が見られなかった。
相手チームの守備はセンターライン上でサイドバックにボールが入った時に囲んで奪うか、奪えないまでも後ろに戻させサイドチェンジを強いることから入った。そのサイドチェンジもGK/CB経由の緩いボールなので再び逆側の同じポイントで止める準備をして対応、をくり返しているうちにプレスがかかる隙を自ら作って思考停止し前に蹴り出すから、落下地点の後藤密着マークで奪うという流れでボール運びをせき止められた。
「両方を使って」と言うがDFラインからの中央の受け手はボランチの岸川であることがほとんどで、そこからの展開は2)で述べるポジショニングの問題で効果はほぼ出なく、まずはDFラインを高く保ちサイドを固めてチャンスを伺えば良かった。結果的にサイドの突破は個人能力頼みになり、特別指定の北川はうまく乗り切ったが(以下お察しを
この守備はジェフLが最もうまく、代表クラスのボランチがいて対人能力で優る新潟とカウンターのスピードが向上したベガルタも導入すると、この3チームには引き分けがやっとという結果に。それにもかかわらず、2014シーズンにはうまくいった先取点を取って最後5バックにして逃げ切るパターン一本だけを指向して前半から前のめりに入ることが多く、後半半ばから失速する現象を生んだ。
2)不安定なポジショニングと序列主義による起用
システムは代表が用いる4-4-2を引き続き採用。右サイドバックの堂園が抜けたポジションを長船の加入を得て乗松をコンバート、右サイドハーフで清家を試用したがこちらはうまくフィットせず不採用となり柴田で固定、が開幕前に見た主な変更点。
不安定、と指摘するのはボランチの一角、主として猶本のポジショニング。当初は猶本だからこそのスターシステム的なものかと認識していたが、シーズン終盤のトレーニングマッチで猶本不在→栗島・岸川のコンビ時に栗島に対して高い位置を取ることを要求する指示が出たのを聞いて、ああこれは監督の指向なのだな、とようやく分かる。1)の引用から想像すると「(高い位置で)ボールを奪う」狙いなのだろうが、組み立ての中では相手DFラインの前に位置してもパスの受け手としては囲まれていることが多く、また猶本の癖なのか左サイドに寄る傾向があって左サイドハーフの加藤のスペースを圧迫して後藤共々渋滞を引き起こすだけ。そこへシーズン後半からは柴田が開き直って左サイドまでカバーしてボールに関わるようになるとますますこのもう一人のボランチのポジションは孤立したままであった。
不安定さはカウンターの喰らいやすさでもあった。援用できる映像は下記の皇后杯2回戦の横浜FCシーガルズ戦から。右SB石井が上がった後ろのスペースを使われる場面。 奪った後時間を要したが縦パス一本で岸川と柴田が置き去りにされ、さらに受け手が中へ切り込んで時間を浪費してはいるが、結局どフリーの外使われてGK前へ通されている。川村真理→深澤→菅澤(ジェフL)や川村優理→中野→有町+井上(ベガルタ)だったら失点している場面。ちなみに走力を感じさせて戻れているのは石井だけ。
これに輪をかけたのはポジション別の序列主義による起用で、これは2014シーズンにも見られた性向。年代別代表を指揮するならば次々に候補の選手が補充されるだろうが、結局2015シーズンに関しては開幕戦のスタメンを覆して出てきた選手はほぼおらず、調子が悪くても起用、70分で加藤交代がお約束に。毎試合プレビューを書いた今季は特にこの志向を一層強く感じた。あえて言うならその序列を少しずつ上ったのはユース(高2)の長野だけだったか。
3)成り行き任せのチーム編成とユースチームとの非連続性
(1)の「退団・加入選手」で書いたように補強の観点によるチーム編成は今季なされていない。この点はこの記事を書いている現在判明している2016シーズンに向けての状況を見ると悪い意味で維持されているようだ。
なぜか浦和に関しては(西の方のなでしこオールスター志向チームとは対照的に)「U-19/U-20代表候補の孵化器」、及び「JFAアカデミー最終学年インターン受け入れ先」として位置づけられているかのようで、それなりにそれなりの選手が入ってくるからいいかっという雰囲気すら漂う。
一方で実力的には2部中位相当のユースチームを下部組織として持ち、清家や長野を早くから2種登録選手として起用しており、通常の練習参加やトレーニングマッチの3本目での出場など交流も図られているかのようにも見えるのだが、ユースチームの関東女子リーグや選手権予選等の公式戦を20試合以上見た経験から照らせば戦術面での連続性はないと断言できる。公式サイトの「トップで活躍できる選手、世界に通用する選手を輩出するための環境づくりにも力を入れています」の文言は空々しい。(ちなみに男子の方の「育成理念」には一貫指導とある)
適性の発見や代表招集どころか学校行事で欠場するような条件下での起用を強いられながらも、前述の1)の戦術・試合運びや、2)のポジショニングについてはユースチームの方が明快かつ洗練されているので、観戦していてストレスが溜まらないのである。これに関連しそうな、せっかくの才能を、という点についてはおそらく2015シーズン退団選手に関する記事で書くことになるだろう。
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というわけでまとまったんだかどうかは全く自信が無いが、レッズレディースの2015シーズンに関しての所感は以上。2016シーズンに向けて監督は継続、選手の退団・加入も発表になっている。その展望については2月のトレーニングを通して、開幕前に書くことができるだろう。浦和に限らず2016シーズンのなでしこリーグは、オリンピック最終予選の結果に大きく影響を受けるはずで、特に代表招集された選手を多く抱えるチームほどコンディションに苦慮するはずである。
○リンク(時々日記内)
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新時々日記
http://www.tokidokinikki.net
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